賠償金11億円!小高区集団訴訟の争点に迫る

2018年09月23日
その他
賠償金11億円!小高区集団訴訟の争点に迫る
東日本大震災では、福島県を中心に多くの方々が被害を受けました。

東日本大震災によって,南相馬市小高区の人々は5年以上の年月もの間、故郷からの避難を余儀なくされたのです。

この避難に伴う精神的苦痛に対して、11億円の賠償金の支払いを命じる判決が下された小高区集団訴訟について詳しく見ていきましょう。

1.小高区集団訴訟とは


2011年に発生した未曽有の大災害、東日本大震災においては多くの人たちが日常を奪われました。

特に,福島第一原子力発電所の事故によって多くの福島県民が故郷での日常生活を奪われることとなりました。

その損害に対する賠償を請求した裁判として有名なのが小高区集団訴訟です。

故郷を奪われた人々の思い


原発事故における集団訴訟は全体で30件存在しますが、今回の訴訟はその7件目として知られています。

津波による福島第一原子力発電所の事故により、福島県に住んでいた人々の多くは避難を強いられました。

福島県南相馬市の小高区は避難区域に指定され、多くの住民が避難を実施しています。

故郷を奪われたという主張のもと、福島第一原子力発電所を管轄していた東北電力に損害賠償を求めたのが小高集団訴訟の主な内容です。

2.小高区 原発の集団訴訟での原告の主張


小高集団訴訟の争点は故郷を奪われたことに対する精神的苦痛の認定です。

小高区に住んでいた人々は突如として発生した大災害によって、何の準備もないまま故郷を離れることを強制されました。

平穏な暮らしを奪われた精神的苦痛


皆さんの町にも、その地域ならではのコミュニティがあると思います。コミュニティは人と人の繋がりによって生まれ、時間をかけて発展していくものです。

小高区の人々は原発事故によってコミュニティを奪われ、日常生活を営むことが不可能になりました。

原告は,平穏に生活する権利や、整った自然環境の中で過ごす権利は憲法上認められたものであり,

また,どこに住居を構えて誰と交流するかといった人格の発達に関わる選択をする権利も憲法上認められていると主張しています。

そして,こうした権利が侵されて、精神に苦痛を被った損害を補償して欲しいというのが小高集団訴訟における原告の主張となっています。

3.小高区集団訴訟の原因


今回の集団訴訟の原因となったのは、東日本大震災による原子力発電所の事故とそれに伴う避難による地域コミュニティの喪失です。

原子力発電所の事故によって福島県の多くの地域が放射性物質に汚染され、人々の生活が困難な場所になりました。

5年の月日がもたらした「戻らぬ故郷」


2011年3月の災害当日に避難を行った小高区の人々が故郷に戻れるようになった、すなわち避難解除がなされたのは2016年7月です。

5年以上もの間、故郷を離れざるを得なかった人々の精神的苦痛はどれほどのものだったのでしょうか?

5年という月日の長さを考えてみてください。

当時高校生だった子供は大学生や社会人となり、それぞれの生活を歩み始めるほどの期間です。

生活の基盤を避難先で築き、もう小高区には戻らないと決意した家庭もいることでしょう。

地域の繋がりが失われ、家屋の多くは倒壊しています。

病院をはじめとして生活の基盤を支える施設さえも機能を取り戻していない中で復興を余儀なくされた人々の気持ちを慮って欲しいという願いを込めて、原告側は訴訟を提起したのです。

2018年になった現在でも、大震災以前の人口を取り戻すことはできておらず、生活環境は回復していません。

小学校や中学校は震災前よりも生徒数を減らし、今後も減少の傾向にあります。

避難生活が5年にも渡れば、別のコミュニティに参加し、そこを定住の地とした人々がいたとしても不思議ではないのです。

今回の訴訟では原告側は総額110億円の賠償金を請求しました。

しかし、賠償金を得られたとしても、心に空いた穴が埋まるとは限りません。

誰かが責任を追及することで、福島第一原子力発電所で発生したような事故が起きるのを防ぐきっかけになるかもしれないという思いが、集団訴訟の引き金になったとも考えられます。

4.小高区集団訴訟の今後の展望


小高区の集団訴訟について,2018年2月7日に東京地裁で,東京電力に約11億円の支払いを命じる判決が下されました。

請求額は110億円だったため、その10分の1の金額ということになりますが、裁判所が「ふるさと喪失」への慰謝料を認めたという点で,注目すべき判決であるといえます。

被災者への損害賠償のモデルケースとして


今回の東京地裁の判決では,生活基盤の崩壊によって小高区の人々が持っている住居を自由に決定する権利や、人格権の侵害といった事実が裁判所によって認定されました。

原告側は必ずしも被害に見合った賠償額とはいえないとする一方で、東北電力の賠償責任を認めたことで、他の集団訴訟にも影響を及ぼす可能性があるとする見解を示しました。

今回の訴訟は故郷で暮らし、地域コミュニティを発展させる権利の消失に対して、賠償を認めたことを意味します。

福島第一原子力発電所の事故で今も苦しみ、訴訟を提起している人々の後押しになる判決といえるでしょう。

5.小高区 集団訴訟まとめ


前代未聞の災害の被害者となった人々がどのような賠償を求め、認定されるのかという問題に対して、小高区集団訴訟は一筋の光明になったといえます。

地域コミュニティを形成し、そこで生活する権利があること。

そして、それを奪われたときに賠償を求める権利があるということを私たちは小高区集団訴訟から学ぶ必要があります。
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