土地や建物を所有されている方の中には、サブリース契約を結んで賃貸物件を経営したいと考えている方もいると思います。
しかしレオパレスオーナー集団訴訟が提起されてから、サブリース契約について懐疑的な目が向けられることも増えました。
今回はサブリース契約の詳しい内容や、レオパレスオーナー集団訴訟で何が問題となったのかを詳しく解説します。
1.レオパレスオーナーの集団訴訟とは
サブリース契約という形の賃貸契約をご存知でしょうか?
レオパレスオーナーが提起した集団訴訟は、サブリース契約を結んだ人たちがレオパレスを相手として訴訟を提起した問題のことをいいます。
サブリース契約について理解を深めないまま不動産業者の甘言に乗ってしまうと、私たちも同じような形で損害を被ることがあり得るのです。
サブリース契約が発端
サブリース契約とは、別名「一括借り上げ契約」とも呼ばれています。この契約において登場するのは、今回の件のレオパレスにあたる不動産業者と原告である物件のオーナーです。
サブリース契約は以下のステップを踏んで、不動産業者とオーナーの間に結ばれます。
まず、オーナー所有のアパートやマンションを、不動産業者が一括で借り上げます。オーナーが不動産業者に貸し出す際の賃料は相場よりも安いのが一般的です。
これではオーナーが損になると思われますが「○○年家賃保証」という内容の契約を結び、安定的な収入を保証することで、不動産業者はオーナーの生活を担保するのです。
家賃保証をした不動産業者は相場通りの値段で一般の賃借人を募り、オーナーに支払った賃料との差額を収入として獲得することになります。
オーナーは入居者の数に関わりなく不動産業者から収入を保証してもらえます。
一方、不動産業者にとっては、サブリース契約は建物を直接所有することなく収入を得られる、いわばウィンウィンの関係ともいえる契約として一時期もてはやされました。
今回の問題でも、レオパレス側はオーナーに対して30年の家賃保証契約及び10年間は家賃が変わらないという内容のサブリース契約を結んできたという背景があります。
2.レオパレスオーナーの集団訴訟の原因とは
サブリース契約が上手く履行されず、オーナーが当初結んでいた契約の内容に見合った収入を得られなくなったことが、レオパレスオーナー集団訴訟の原因となっています。
家賃保証の契約があるにもかかわらず、オーナーはなぜ収入を得られなくなってしまったのでしょうか?
家賃減額を受け入れたオーナーの悲劇
レオパレスはリーマンショックによる業績悪化を理由に、オーナーに対して家賃の減額の交渉をしました。
この交渉の効果は永続的なものではなく、業績の回復によって当然戻るものとしてオーナーは交渉に応じます。
しかし実際は、レオパレスの業績に関係なく家賃は減額されたままなのです。
これではオーナーには減額された分の家賃しか収入として手元に入ってきません。
賃貸物件を建築した際のローンが残っているオーナーも多く、家賃増額に応じないのは不当だとして訴訟を提起したのです。
また一部では、サブリース契約そのものを解除するという言葉をちらつかせて、家賃減額に応じさせたという話も聞きます。
サブリース契約による安定した収入を望んでいたオーナーにとっては、それがなくなってしまうくらいなら多少減額されても仕方ないとして、交渉に応じた方もいるのです。
また,オーナーとレオパレスは10年間家賃が変わらないという条件でサブリース契約を締結したにもかかわらず,レオパレスは家賃の減額請求をすることはできるのでしょうか。
借地借家法第32条では、賃貸借契約の借主は、経済的事情や建物の価値に著しい変動があったときに、契約の条件にかかわらず家賃の減額を請求できることを定めています。不動産業者は通常賃貸借契約において貸主になることが多い立場ですが,
今回のサブリース契約では、レオパレスがオーナーとの関係において借主となっています。そこで借主保護を目的とした借地借家法第32条を盾にしてサブリース契約の契約条件にかかわらず,オーナーに家賃減額を認めさせたのです。
このように,実際には無効となるような契約条件を契約書に記載し,オーナーを安心させたうえでサブリース契約を締結するレオパレスに不満が募り,集団訴訟が提起されたのだと思われます。
使われない修繕費用
もう1つの原因は、レオパレス側の不誠実な物件管理です。
通常、オーナーは建物の共用部分の修理費用や、それぞれの居室において劣化した壁紙などを交換する際に支払うお金を負担します。
しかし実際に物件を管理するレオパレス側が修繕費用をオーナーから徴収しておきながら、修繕を実施していないという事実が浮き彫りになったのです。
物件がきちんと管理されていなければ入居者の間に悪評が立ち、家賃収入にも影響します。
家賃減額の交渉に応じていたオーナーにとっては、レオパレスの業績が回復しないと自分の収入も増えないわけですから、まさに死活問題なのです。
3.レオパレスオーナーの集団訴訟で原告の主張と請求は?
全国レオパレスオーナーが結成した
LPオーナーの会を筆頭に、2017年9月以降50人に迫るレオパレスのオーナーが集団訴訟を起こしています。
その主な内容は家賃の増額と不当利得の返還請求です。
家賃増額の根拠は、
・レオパレス側の担当者がサブリース契約の解除をちらつかせて減額交渉をした
・家賃減額の契約を結ぶまで居直りに近い態度を取った
といったケースが見受けられ、そうした状況において結ばれた家賃減額の契約そのものが無効だというものです。
さらには、こうした交渉に基づいて借り上げた物件を用いて得た利益や、実際の修繕が伴っていない状態で徴収し続けた修繕費は不当利得にあたることから、それを返還するように請求しています。
4.レオパレスオーナーの集団訴訟で被告レオパレスはどんな対応をした?
集団訴訟の被告となったレオパレス側はどのような態度を示したのでしょうか?
レオパレスは訴訟を提起された現在においても、争う姿勢を保っています。
契約や家賃減額交渉はオーナーと合意を取っており不当ではない、自分たちの正当性を訴えていくといった形で、オーナー側と反発しているのが現状です。
また、報道機関がこの問題を報じた記事の内容について抗議を見せるなど、和解というよりも判決での決着が予想されています。
2018年9月現在でも判決が出ていないレオパレスオーナー集団訴訟は、サブリース契約に対する警鐘として私たちの記憶に残ることでしょう。
5.レオパレスオーナー 集団訴訟・まとめ
係争中の裁判であるレオパレスオーナー集団訴訟は、サブリース契約が問題の要となっています。
サブリース契約自体が悪というのではなく、それを隠れ蓑にしてオーナーから搾取する不動産業者に注意が必要なのです。
「○○年家賃保証」という言葉は非常に魅力的ですが、それに乗せられて今回のようなケースに巻き込まれないように気を付けましょう。